友人のはなし

いまだにミュージシャンになることをあきらめていない友人がいる。

学生時代からバンド結成と解散を繰り返していたが、30歳を過ぎたあたりからは単独の弾き語りでライブハウスを回ったり街頭で演奏したりしているようだ。

かつては自主製作で何枚かCDも制作していたが、音楽で得られる収入は僅かで、生活費のほとんどをアルバイトでまかなっているという現状だ。

2年ほど前、そんな彼と酒を飲む機会があった。

さすがにもうミュージシャンへの道はあきらめているかなと思いきや「俺は必ず音楽でメシを食ってみせるぜ」などと息を巻き、昔と変わらぬ熱量で音楽への思いを語ってくれた。

別れ際「そうだ、これからはお前が昔作ったあのCDの上にご飯とかおかずをのせて食べちゃえよ、そしたらなんとか音楽でメシが食えてることになるだろ?」と言ったら「お前は相変わらずだなぁ」と呆れられてしまった。

その日はそのまま自宅に帰ってシャワーを浴び、パジャマを着て布団に入り部屋の電気を消したあと、小さな声で「お前が言うなよ」って言ってから就寝した。

コメント

  1. 猫山 より:

    夢をあきらめない友達になんてこと言うんですか!

    通報しました。

  2. 雷電為右衛門 より:

    なんだかちょっとジーンときて短い小説を読んだような気持ちになりました。
    おぞちゃんはこうやって色々な人達の心をくすぐっていくんでしょうね。

  3. 新バキ結衣 より:

    どっちもどっちだな!