数年前に父を亡くしている。教育には厳しく、頑固で、たくさんお酒を飲み、そしてなにより家族を愛した父だった。高校生になっても力では敵わないほど強い存在だった父、しかし晩年は入院生活で日を追うごとに小さくなっていくのがわかった。ある程度心の準備が出来ていたせいか、最後まで涙は出なかった。父が亡くなる数日前、父の弟にあたる叔父と話す機会があった。長男であった父は兄弟の中でも絶対的な存在だったらしく、そんな父の思い出話をたくさん聞かせてくれた。
「そういえば学生時代、兄貴が大事にしているステレオがあってな、それに触ってるところを見つかったことがあったんだけど、そのときひどく怒られてな、本当にころされるんじゃないかっていうくらい怖かったよ。そのステレオは兄貴が結婚してからもずっと大事に使ってて、大人になってからも怖くてステレオには近寄れなかったな。そのうちお前が生まれて、2歳くらいのときかな?イタズラしてそのステレオ壊しちゃったんだよ、兄貴どうするんだろうって思ったら大喜びしてそのことを周囲に話していたよ」
葬儀が終わって数日後、叔父から聞いたそんな父の昔話を人に話している途中で急に涙が流れてきた。憎しみを感じた時期もあったが、心底家族を愛した父。そのステレオは今でも父の書斎にある。今度叔父に会ったら「今ならもう好きなだけ触っていいよ」って教えてあげようと思う。
コメント
数年経ってもそんな風に思い出して貰えるお父様はとても幸せだと思います。
おぞんさんの優しい強さはお父さん譲りなんですね。
変態は祖父譲りです!!
自分が大切にしていたものよりもっとずっと大切な存在が家族だったんですね。愛情たっぷりの素敵なお父さんです✨
寝過ぎなのか、家族を裸族と読み間違えました。
良い話だ๐·°(৹˃̵﹏˂̵৹)°·๐
おぞんさんに初めて泣かされました
やはり泣かれるより笑われるほうが性に合っていますね(わらい)