総合点

若いころ付き合っていた彼女との思い出だ。日曜日一緒に出掛ける予定をしていたが、彼女が休日出勤となり予定はキャンセルになった。土曜日の夜から彼女のマンションに泊まり込んでいた私は、翌日早起きして車で彼女を職場へと送った。「帰りは夕方になるから部屋でお酒でも飲んでゆっくりしててね」と言って彼女は車を降りた。そのままマンションへ戻った私はまず前日の食器を片付け、キッチンとリビングをきれいにしたあとお風呂とトイレを掃除した、そして布団カバーやシーツを洗濯し、その間にスーパーへ買い物に向かった。部屋に戻り洗濯物を乾燥させながらエプロン姿で夕飯の支度をした。すべての準備が整ってまもなく彼女は帰宅した。私は「今日は急な休日出勤お疲れさまでした」と言って彼女を迎えた。「え?なんか部屋がすごくきれい」と驚く彼女に「お風呂が沸いてるので夕飯の前にどうぞ」と脱衣所へご案内した。「すご~いお風呂もピカピカ~」という彼女の声に耳を傾けながら手際よく夕飯を準備を始める。「すご~い!!これ全部自分で作ったの?」と言いながら彼女は私が用意した夕飯を前に歓喜した。「天気が良かったのでお布団も干したし、今日はゆっくり休んでね」と言う私に「すごいうれしい!どうしちゃったの?今日の疲れが一気に吹き飛んだ!」と彼女のご機嫌はピークに達した。「じゃ食べようか」と私は冷蔵庫から冷えたビールを取り出し、彼女が持つグラスへと注いだ。がしかし、ついつい勢いよく注いでしまったビールの泡がグラスからあふれ彼女の右手を濡らすと「ちょっとあんたなにすんのよ!!」とこれまでのすべてがリセットされた。偏見かもしれないが、私の経験上なかなか総合点で評価してくれる女性は少ない。その日の朝に彼女が言った通り、部屋でお酒でも飲んでゆっくりしていれば良かった。

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